ZEB住宅はもしもの時に強い?停電対策や災害への備えを知る
近年高まる自然災害への不安
近年、日本各地で台風や地震、記録的な大雨など、自然災害が増加しています。それに伴い、長時間の停電や断水といったライフラインの寸断も発生しており、ご自宅での備えに対する関心が高まっています。特に高齢のご家族がいるご家庭では、非常時の室温維持や情報収集手段の確保など、安心できる環境をどう維持するかが重要な課題となっています。
新しい住宅技術に関心はあるものの、複雑なシステムや大規模な改修には抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ZEB(Nearly ZEBを含む)住宅で培われる技術や考え方は、日々の快適性や省エネだけでなく、実はこうした「もしもの時」への備えにもつながる側面を持っています。
ZEB住宅が災害に強いと言われる理由
ZEB住宅は、エネルギー消費を極力抑えつつ、使うエネルギーは自ら創り出すことを目指した住宅です。この過程で導入される技術が、災害時のレジリエンス(回復力や耐性)を高める役割を果たします。
主な要素として挙げられるのは以下の点です。
- 高い断熱・気密性能: ZEB住宅の基本となるのが、外気温の影響を受けにくい高い断熱性能と気密性能です。これにより、冷暖房を使用できない停電時でも、室温が急激に変化することを抑制できます。特に冬場の厳しい寒さや夏場の猛暑時でも、一定の室内環境を比較的長く保つことが期待でき、これはヒートショックのリスク低減や熱中症予防にもつながります。
- 省エネ設備: 少ないエネルギーで高い性能を発揮する設備機器が導入されています。非常時に限らず、平時からの省エネ性能は、エネルギー供給が不安定になった際にも役立ちます。
- 再生可能エネルギーの活用(特に太陽光発電): ZEBの要素として重要なのが、太陽光発電などの再生可能エネルギーでエネルギーを創り出すことです。日中に発電した電気を自家消費することで、電力会社からの供給が停止した状態でも、最低限の電力を使用できる可能性があります。
- 蓄電池の導入: 太陽光発電で余った電気を貯めておける蓄電池は、停電時に非常に有効な設備です。天候に左右されやすい太陽光発電の発電量を補い、夜間や悪天候時でも蓄えた電気を使用できるようになります。
停電時に役立つZEBの機能と具体的な備え
ZEB住宅で特に停電時の安心を高めるのが、太陽光発電システムと蓄電池の組み合わせです。
- 太陽光発電システム: 晴天時であれば、日中に発電した電気を非常用コンセントから使用できる場合があります。これにより、スマートフォンの充電や最低限の照明、情報収集機器の電源などを確保できます。
- 蓄電池: 停電が発生しても、蓄電池に貯めておいた電気を一定時間使用できます。これにより、夜間や曇りの日でも電気が使え、冷蔵庫を稼働させて食品を守ったり、暖房器具(蓄電池容量による)を使用したりといった対応が可能になります。容量にもよりますが、生活に必要な最低限の電力を数時間から数日間まかなうことも期待できます。
全てのZEB住宅に蓄電池が導入されているわけではありませんが、将来的な導入を見据えたり、リフォームでZEB化を目指す際に合わせて検討したりすることで、非常時の備えを強化できます。
非常時の安心感につながる断熱・気密の恩恵
たとえ太陽光発電や蓄電池がなくても、ZEBの基礎である高い断熱・気密性能だけでも、災害時の安心感は大きく向上します。
例えば、真冬に停電した場合、暖房が使えなくても外からの冷気の侵入を防ぎ、室内の暖かさを逃がしにくいため、体温の低下やそれに伴う健康リスクを抑制する助けとなります。真夏であれば、外からの熱の侵入を抑え、比較的涼しい室内環境を維持しやすくなります。これは、特に温度変化に弱い高齢の方々にとって、非常に重要なメリットです。
段階的な備えとしてのZEB化
大規模なリフォームや新築でなければZEB化は難しい、非常時の備えまで一度に行うのは費用がかかると感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ZEB化は必ずしも一度に全てを行う必要はありません。「まずは断熱性能を高めるリフォームから」「将来的に蓄電池の設置も検討する」といった段階的なアプローチも可能です。
例えば、窓の断熱改修や壁・天井への断熱材充填といった比較的小規模なリフォームでも、建物の基本性能は確実に向上し、非常時の室温変化を穏やかにする効果が期待できます。その後、ライフスタイルの変化や予算に合わせて太陽光発電や蓄電池の導入を検討していくこともできます。
まとめ
ZEB住宅は、普段の暮らしで光熱費削減や快適性の向上を実現するだけでなく、万が一の自然災害、特に停電時においても、高い断熱性能や創エネ・蓄エネ設備によって、暮らしの安心と安全を守る力を持っています。
非常時の備えというと特別な対策が必要と思われがちですが、日々の快適性や省エネを目指したZEB化の取り組みが、そのまま災害への備えにもつながるのです。将来の安心を見据えた住まいづくりの選択肢として、ZEBやNearly ZEBが持つ非常時のレジリエンスという側面もぜひ考慮してみてはいかがでしょうか。