わたしのZEBハウス

はじめてのZEB化はNearly ZEBで考える:現実的なメリットと導入への道

Tags: Nearly ZEB, ZEB化, 省エネ, リフォーム, 光熱費削減

はじめてのZEB化に「Nearly ZEB」という選択肢を

住宅の省エネ性能を高め、快適で健康的な暮らしを実現するZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)への関心が高まっています。光熱費の負担を減らし、冬の寒さや夏の暑さによる健康への影響を和らげたいと考える方も多いのではないでしょうか。

しかし、「ZEB」と聞くと、大規模な改修や高額な費用が必要だと感じ、自分事としては少しハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。新しい技術についていけるか不安がある、という声も耳にします。

そこで注目したいのが「Nearly ZEB」です。これは、ZEBの目標レベルに限りなく近い省エネ性能を持つ住宅を指します。フルスペックのZEBを目指すよりも、より現実的な選択肢として検討しやすく、それでいて日々の暮らしに確かな変化をもたらす可能性があります。

このコラムでは、はじめてZEB化を考える方に向けて、Nearly ZEBを最初のステップとして検討することの現実的なメリットと、導入に向けた考え方についてご紹介します。

Nearly ZEBとは何か?ZEBとの違い

ZEBは、断熱性能の向上、高効率な設備機器の導入、そして再生可能エネルギーの活用によって、年間のエネルギー消費量をゼロにすることを目指す住宅です。

一方、Nearly ZEBは、ZEBの定義における「再生可能エネルギーを除いた基準一次エネルギー消費量」を75%以上削減し、さらに再生可能エネルギーを導入することで、年間の一次エネルギー消費量を概ねゼロにする住宅を指します。

簡単に言えば、Nearly ZEBは、ZEBの目標達成に向けて、省エネによるエネルギー消費量削減に重点を置きつつ、再生可能エネルギーも組み合わせることで、エネルギー収支を限りなくゼロに近づけるレベルの住宅です。

フルZEBと比較すると、建物の状況や導入する設備によっては、目標達成に向けたハードルがやや下がる場合があります。これが、特に既存住宅のリフォームなど、ゼロから建てる新築とは異なる条件下でZEBレベルの性能を目指す際に、現実的な選択肢となる理由の一つです。

Nearly ZEB導入で得られる具体的なメリット

では、Nearly ZEBを導入することで、私たちの暮らしにどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

光熱費の大幅な削減

最も分かりやすいメリットの一つは、光熱費の削減です。高い断熱性能と高効率な設備により、冷暖房に必要なエネルギーが大幅に削減されます。さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーで自家消費や売電を行うことで、電気代やガス代の負担を大きく減らすことが期待できます。具体的な削減額は住宅の規模や仕様、お住まいの地域によって異なりますが、年間数万円から、場合によっては十数万円以上の削減も不可能ではありません。

健康で快適な室内環境

断熱性が高まることで、家の中の温度差が少なくなります。冬場の廊下やトイレといった場所の急激な温度低下が抑えられ、ヒートショックのリスク軽減に繋がります。また、高断熱・高気密化とセットで導入されることが多い高性能な換気システムは、結露の抑制やカビ・ダニの発生を防ぎ、室内の空気質を良好に保ちます。これにより、アレルギーや呼吸器系の疾患のリスク軽減にも貢献し、一年を通して快適で健康的な室内環境を実現します。

将来への安心感

エネルギー価格の高騰は、多くの家庭にとって懸念材料です。Nearly ZEBであれば、エネルギー消費量が少ないため、将来の価格変動の影響を受けにくくなります。また、太陽光発電があれば、日中の電力を自家消費できるため、停電時にも最低限の電力を確保できる可能性が高まり、災害への備えとしても有効です。このように、Nearly ZEBは、エネルギーに関する将来的な不安を和らげ、暮らしに安心感をもたらします。

Nearly ZEBを「第一歩」として考える理由

「いきなりZEBは大変そう」と感じる方にとって、Nearly ZEBはなぜ現実的な「第一歩」となり得るのでしょうか。

導入のハードルが比較的低い場合がある

建物の構造や予算によっては、フルZEBの基準を完全に満たすのが難しいケースもあります。Nearly ZEBは、ZEBに準じる高い省エネ性能を目指すため、既存住宅の改修においても、建物の制約に合わせながら無理なく高いレベルの断熱や設備更新を行う選択肢となり得ます。

費用対効果のバランス

フルZEBを目指す場合と比較して、導入費用を抑えられる可能性があります。再生可能エネルギーの導入規模や設備の種類を調整することで、初期投資の負担を軽減しつつ、省エネによるメリットを十分に享受できるレベルを目指せます。これにより、費用対効果のバランスを取りやすくなります。

段階的な改修に繋げやすい

既存住宅の場合、一度に全ての改修を行うのが難しいこともあります。Nearly ZEBレベルの断熱改修や設備更新を最初のステップとし、将来的に太陽光発電システムを増設するなど、段階的にZEB化を進めていくアプローチも考えられます。Nearly ZEBは、その後のステップアップを見据えた計画の土台となり得ます。

Nearly ZEB導入への道筋:何から始めるか

Nearly ZEBによる住宅のZEB化を検討したいと思ったとき、具体的に何から始めれば良いのでしょうか。

1. 情報収集と現状把握

まずは、ご自身の住宅の築年数、構造、現在の断熱状況や設備の状況などを把握することから始めます。そして、ZEBやNearly ZEBに関する情報をさらに集め、どのような改修が可能か、どのようなメリットが得られそうかといったイメージを具体的にしていきます。

2. 専門家への相談

Nearly ZEB化は専門的な知識が必要です。建築士、工務店、リフォーム会社など、ZEBや省エネ住宅に関する実績や知識を持つ専門家へ相談することが重要です。住宅の現状診断や、どのような改修が可能か、費用はどのくらいかかるか、利用できる補助金はないかなど、具体的なアドバイスを得られます。信頼できる相談先を見つけることが、成功への鍵となります。

3. 計画と実行

専門家と相談しながら、目標とするNearly ZEBのレベル、具体的な改修内容、費用、スケジュールなどを盛り込んだ計画を策定します。予算やライフスタイルに合わせて、無理のない範囲で、最大の効果が得られるような計画を立てることが大切です。計画が固まったら、いよいよ改修工事の実施となります。

暮らしに安心と快適をもたらすNearly ZEB

フルスペックのZEBには抵抗がある、大規模な工事は避けたい、でも光熱費や健康のことは気になる。そのような方にこそ、Nearly ZEBは現実的で有効な選択肢となり得ます。

Nearly ZEBは、高い省エネ性能によって光熱費の負担を減らすだけでなく、断熱性や気密性の向上、適切な換気によって、家の中の温度差を解消し、結露やカビを防ぎ、健康で快適な室内環境を実現します。これは、特に冬の寒さが厳しい地域にお住まいの方や、小さなお子様、高齢のご家族がいるご家庭にとって、大きな安心に繋がります。

「はじめてのZEB化」としてNearly ZEBを検討することは、無理なく、そして着実に、未来の安心で快適な暮らしを手に入れるための賢い第一歩となるでしょう。まずは情報収集から始め、信頼できる専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。