わたしのZEBハウス

既存住宅のZEB化、まずはどこから?段階的アプローチと得られる効果

Tags: ZEB, リフォーム, 既存住宅, 断熱, 光熱費削減

はじめに:我が家のZEB化、どこから手をつければ良いのか

近年、住宅の省エネ性能に対する関心が高まり、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)という言葉を耳にする機会が増えています。ZEBと聞くと、最新の技術を満載した新築住宅というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、今お住まいの既存住宅でも、ZEBやNearly ZEB(ニアリーゼブ)といった高い省エネ性能を目指すことが可能です。

一方で、「大規模なリフォームは大変そう」「費用がどのくらいかかるか不安」「そもそも何から始めたら良いのか分からない」と感じ、導入にためらいを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、既存住宅のZEB化を検討されている皆様に向けて、必ずしも全てを一度に行うのではなく、段階的に、ご自身のペースに合わせて進めるアプローチ方法と、それぞれのステップで得られる具体的な効果についてご説明します。無理なく、着実に、我が家を快適で省エネな住まいへと進化させていくためのヒントとなれば幸いです。

なぜ段階的なZEB化が有効なのか

ZEBは、「断熱」「省エネ」「創エネ」という3つの要素を組み合わせることで、エネルギー消費をゼロ(または限りなくゼロ)にすることを目指します。理想的にはこれらの要素全てを高性能にすることで高い効果が得られますが、既存住宅においては、構造上の制約や予算、暮らしへの影響などを考慮すると、一度に全てを完璧に行うのは難しい場合があります。

ここで有効となるのが、段階的なアプローチです。優先順位をつけ、費用対効果の高いものや、比較的取り組みやすいものから始めることで、リフォームによる負担を抑えつつ、少しずつ住宅の性能を向上させていくことができます。また、段階的に進めることで、それぞれの改修による効果を実感しながら、次のステップを検討することが可能になります。

どこから始めるべきか:優先順位の考え方

既存住宅のZEB化を段階的に進めるにあたり、まず重要となるのが「どこから始めるか」という優先順位の考え方です。一般的に、住宅の省エネ化において最も基礎となり、その後の効果にも大きく影響するのが「断熱」です。

  1. 第一ステップ:断熱性能の向上 エネルギーを「創る」ことや「節約する」ことも大切ですが、その前に、そもそも「エネルギーを逃がさない」という対策が最も効率的です。断熱性能が低い家では、せっかく暖房や冷房で快適な室温にしても、熱が窓や壁、屋根、床からどんどん逃げてしまいます。これにより、必要以上に冷暖房設備を稼働させることになり、エネルギーが無駄になります。

    • 具体的な改修箇所:

      • 窓: 熱の出入りが最も多い場所です。既存の窓の内側に樹脂製の内窓を設置したり、断熱性能の高いサッシやガラスに交換したりする方法があります。内窓設置などは比較的短期間で工事が完了し、費用対効果を実感しやすい改修の一つです。
      • 壁・床・天井(屋根): 専門的な工事が必要になる場合が多いですが、外壁に外張り断熱を施したり、壁の内側に断熱材を充填したりします。特に天井裏や床下への断熱材充填は、比較的効果が大きい場合が多いです。
    • 得られる効果:

      • 光熱費削減: 暖冷房効率が向上し、エネルギー消費量が大幅に削減されます。
      • 快適性向上: 冬は暖かく、夏は涼しい、年間を通して安定した室温を保ちやすくなります。結露の抑制にもつながります。
      • 健康への寄与: 冬の急激な温度変化(ヒートショック)のリスクを低減するなど、健康で快適な暮らしにつながります。

    まずはこの「断熱」から手をつけることで、その後の省エネ設備の効果も最大限に引き出すことができます。

  2. 第二ステップ:省エネ設備の導入・高効率化 断熱性能が高まったら、次に検討したいのが使用する設備の省エネ化です。同じようにエネルギーを使っても、効率の良い設備を選ぶことで、消費エネルギーをさらに削減できます。

    • 具体的な改修箇所:

      • 高効率エアコンへの交換: 最新のエアコンは、旧型のものに比べて大幅に省エネ性能が向上しています。
      • LED照明への交換: 消費電力が少なく長寿命なLED照明は、比較的容易に交換できます。
      • 高効率給湯器(エコキュートやエコジョーズなど)への交換: 給湯にかかるエネルギー消費を削減できます。
    • 得られる効果:

      • 光熱費削減: 各設備の消費電力が減ることで、電気代やガス代の削減につながります。
      • 利便性向上: 最新の設備は、機能面でも優れていることが多いです。
  3. 第三ステップ:再生可能エネルギーの導入(創エネ) 断熱と省エネでエネルギー消費量を可能な限り削減した上で、残りのエネルギーを再生可能エネルギーで賄うことを目指します。

    • 具体的な改修箇所:

      • 太陽光発電システムの設置: 屋根などに設置し、自宅で使用する電気を自分で作り出します。余った電気は売電することも可能です。
    • 得られる効果:

      • 光熱費の抜本的削減・ゼロ化: 自家発電した電気を使用することで、電力会社から購入する電気量を大幅に減らせます。
      • 売電収入: 余剰電力があれば、売電による収入を得られる可能性があります。
      • 環境貢献: クリーンなエネルギーを利用することで、環境負荷の低減に貢献できます。

    創エネ設備は初期投資が大きくなる傾向がありますが、長期的な光熱費削減効果や、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)などを活用することで、導入のハードルを下げることも可能です。

段階的なZEB化を進める際の注意点

段階的にZEB化を進めることは、費用や工期を分散できるメリットがありますが、いくつか注意点があります。

まとめ:小さな一歩から始めるZEB化

既存住宅のZEB化は、一度に全てを完了させる必要はありません。「まずは窓の断熱から」「次に古くなった給湯器を交換しよう」というように、段階的に、ご自身のペースで進めることが可能です。

断熱性の向上による冬の寒さやヒートショックへの不安の軽減、高効率設備への交換による日々の光熱費の削減、そして将来的な創エネによるエネルギーの自給自足。それぞれのステップで得られる効果を実感しながら、我が家をより快適で、健康に、そして経済的に優しい住まいへと変えていくことができます。

大規模なリフォームへの抵抗感をお持ちの方も、まずは比較的小規模な改修から検討してみてはいかがでしょうか。専門家と相談しながら、無理なく、着実に、理想の住まいに近づけていくことが可能です。